ゴルフが日本に紹介されてから100年を超え、このスポーツは日本の社会に深く浸透しています。この長い時を経て、日本独自のゴルフ文化が育まれてきました。特に興味深いのは、日本語と英語が融合したユニークなゴルフ専門用語や新しい造語が生まれ、広く普及している点です。これらの言葉は国内のゴルファーには普通に理解されていますが、英語圏のゴルファーには伝わりにくいのが実情です。英語で会話する際にこれらの特有の単語を使って相手に通じなかった経験をお持ちの方も少なくないでしょう。
翻訳されずに使用されるゴルフ専門用語
日本のゴルフ界において、英語の専門用語がそのまま使われることが一般的です。例えば、「par(パー)」、「birdie(バーディー)」、あるいは「tee shot(ティーショット)」のような言葉は、日本語のゴルフ用語として普及しています。これは、野球での「ストライク」や「ボール」などの用語がそのまま使われるのと似ています。しかし、「golf(ゴルフ)」のように、広く受け入れられている日本語訳がない言葉も存在します。歴史的に見ると、戦時中には「打球」などの別の表現も用いられたことがあります。
さらに、日本語に訳されていないゴルフ用語は多数あり、その中には初めて聞くとすぐには理解しにくい複雑な用語も含まれています。たとえば、過去に使われた「through the green(スルー ザ グリーン)」や現在も用いられる「loose impediment(ルースインペディメント)」などがそうです。これらの用語は理解するのが難しいものの、日本語には翻訳されていません。これらの言葉の意味を正確に把握している人は、ゴルフに詳しいことが間違いないでしょう。
日本で普及した翻訳ゴルフ用語
ゴルフの英語用語の中には理解が難しいものがありますが、日本語に翻訳されて広く使われる用語もあります。たとえば、「obstruction(障害物)」、「outside agency(局外者)」、そして「provisional ball(暫定球)」のような言葉は、英語から日本語に翻訳されて、日本のゴルファーたちに広く受け入れられています。特に「outside agency」のような用語は、もともと英語圏でも理解しにくいもので、現在では「outside influences」という用語に変わっています。また、「through the green(現在はgeneral area)」や「casual water(現在はtemporary water)」といった言葉もあります。
日本では、理解しやすいものは日本語に、そして響きの良い分かりやすい英語用語はそのまま使われることがあります。例えば、テレビの解説では「2アンダー」や「5アンダー」と言うことが多いですが、「12アンダー」や「20アンダー」のように発音が難しい場合は、日本語と英語を併用することが一般的です。しかし、「クワドラプルボギー」のような複雑な用語はあまり知られていないため、使用されることは少ないようです。これは、日本人ならではの傾向かもしれません。
ゴルフにおける「ライ(lie)」に関連する用語は、多くが日本語に訳されていない状態で使われています。たとえば、「フェアウェイ(fairway)」、「ラフ(rough)」、さらには「セミラフ(semi-rough)」や「ファーストカット(first cut)」などの言葉は、日本語の同等表現がないまま使用されています。一部のゴルファーは「左足上がり」や「左足下がり」といった状況を英語で述べることもあるかもしれません。しかし、特定の状況を示す「above/below one’s feet lies」のような英語フレーズを使う日本人は稀です。
また、短く刈られた芝やほとんど芝がない状態(「tight lies」)、芝のない裸地(「bare ground」)を表す言葉は英語で用いられることがあります。しかし、フワフワしたライ(「fluffy lie」)、不確かなライ(「iffy lie」)、バンカー内の「目玉」状態(「fried egg lie」)、ボールの周りに芝が絡む状態(「nesty lie」)のように複雑な状況を示す英語用語を使用する日本人は非常に少ないでしょう。
日本独自のゴルフ用語:和製英語の例
日本のゴルフ界では、日本独自に生まれた英語の表現、つまり和製英語がよく使われています。これらの表現は、英語話者にはなじみがないこともありますが、非常に実用的で独創的です。例えば、「パーオン」や「ニアピン」、「ドラコン」といった言葉があります。さらに、「ショートホール」、「ミドルホール」、「ロングホール」のようなホールの分類や、「フックライン」、「スライスライン」、風の状況を示す「アゲインスト」や「フォロー」といった表現も使われています。これらは英語圏では普通使われない和製英語ですが、日本のゴルファーには便利な言葉として広く使われています。
さらに、逆風を「アゲてる」と表現したり、追い風を「フォロってる」というような表現も、ユニークな発想が光る面白いものです。また、「ダフる」という言葉も、同じように日本独自のアイデアから生まれた表現と言えます。