ゴルフをする際、風との闘いは避けて通れない部分です。風が完全に止まっている状態でプレイできることは、ほとんどありません。風は気圧の違いによって発生し、通常は高い気圧の場所から低い気圧の場所へと流れます。風の強さは、平均風速や瞬間風速の最大値などで示されますが、風がいつも同じ強さで吹き続けるわけではありません。強く吹いたり、弱まったり、そして風向きや速さが変わったりするため、ゴルフではこれが大きな課題となります。
ゴルフと風の共存
風速が平均の約1.5倍から2倍に達することは一般的で、時には3倍以上になることもあります。たとえば、東京では年間を通して平均風速が約3メートル/秒(弱風)であるため、秒速5メートルの風が吹くのは普通のことであり、秒速10メートルの風が年に約30日程度吹くことも珍しくない現象です。
風の条件は日によって変わりますから、ゴルフをする人はプレイのたびに風の動きを注意深くチェックし、その瞬間瞬間で最適な打ち方を考える必要があります。風の方向としては、基本的には向かい風、追い風、そして横風があり、ゴルフの世界ではこれらをそれぞれ「アゲインスト」(向かい風)、「フォロー」(追い風)と呼びますが、これらは日本独自の表現で、英語ではheadwind、downwind、crosswindやsidewindといいます。
ゴルフにおける風の影響と飛ぶ距離
ゴルフで風の効果はよく「1クラブ分の向かい風」と表されます。たとえば、通常7番アイアンを使う距離で、風のために6番アイアンが必要になる強さの場合、それを「1クラブ分の向かい風」と呼びます。風がボールの飛び方に与える影響は、ボールの打ち出し角度やスピンの量によって異なるので、一言で説明するのは難しいです。だが、250ヤード飛ばすドライバーショットが時速10マイル(約4.5メートル/秒)の追い風だと9ヤード伸び、向かい風だと13ヤード縮むというデータが示すように、向かい風は追い風よりも飛距離への影響が大きいと言えます。もちろん、ショットごとに違いはありますが、一般的に向かい風の影響が追い風に変わると、飛距離は約7ヤードほど増えることが予想されます。
風を味方に変えるゴルフテクニック
風の強さや効果を完璧に判断し、毎回正確に対応するのはなかなか難しいですが、風の影響を受けにくいショットの技術を身につけることで、風の計算が少し外れたとしても、その影響を最小化できます。風が強い日でも、こうしたショットを安定して行える選手は、風を気にすることなくプレイを楽しめます。特にアマチュアゴルファーが苦労する向かい風の場面では、低い弾道のドローショットが有効です。逆に、スライスをしがちな選手は、風に直撃され飛距離が大きく落ちるため、さらにプレイが難しくなります。
向かい風に対抗するためには、パンチショットやノックダウンショットといった低弾道ショットが効果的です。これらのショットでは、単に弾道を低くするだけでなく、バックスピンを減らしてボールが上がりすぎないようにすることがカギとなります。力を入れすぎるとバックスピンが増えてしまうので、そういった打ち方は避けた方が良いです。また、ボールを足に近づけすぎるとバックスピンが増えるため、それも避けるべきです。スタンスの中心にボールを置いて、下半身を安定させ、スリークォーターのスイングでリラックスして打つことが、このショットのポイントです。体の回転を安定させ、腕の振りを控えめにして、肩の動きでボールを打ち出し、低いフィニッシュを意識することで、成功率が高まります。向かい風を打つ際は、大きめのクラブを選んで、スリークォータースイングを活用すると良いでしょう。
上級者の技術として、横風を打つ際には、風とボールの動きを意識的に対立させる方法も有効です。左から吹く風にはドローショットを、右から吹く風にはフェードショットを選ぶことで、横風の影響を減らし、ボールをよりコントロールしやすくすることができます。
風の力を味方につける戦略
風の影響を減らすことが一般的には賢い選択だとされますが、風をうまく使ってプレイすることも大切なテクニックの一つです。特に、飛距離を伸ばすことがプレイに有利な場合には、追い風を利用してボールをより遠くへ飛ばす戦略や、向かい風を使ってバックスピンをかけてボールを正確に止める技術が役立ちます。
追い風のあるティーショットでは、高い弾道で飛距離を増やすことが可能です。このような場合、スピンを含んだ高い弾道のショットを目指し、フィニッシュを高くすることが推奨されます。バックスピンが少ないとボールの落ち方に影響が出る可能性があるため、実際に打つ前に大きなフィニッシュの動作を意識した素振りを行い、求めるショットのイメージを明確にすることが有効です。
追い風が吹いている時のグリーンアプローチでは、ボールを少し右足の前に置いて、バックスピンを多く含むノックダウンショットを選択することが良いでしょう。バックスピンはボールの停止を難しくすることがありますが、その効果を計算に入れた上でショットを行う必要があります。逆に、向かい風の時は、バックスピンをあまりかけなくても風がボールを減速させ、グリーン上で早く停止させることができます。
このように、飛距離を伸ばしたい時を除き、風が強い日には通常、低弾道のショットを選ぶことが多いですが、スピンの加減はショット選択において重要なポイントになります。グリーンへのアプローチでは、ボールを右足の前に置くか、スタンスの中央に置くかを適切に判断できるようになることが望ましいです。
風を味方につけるショット技術の習得
風が強い日にゴルフコースを上手く乗り切るには、風の方向に合わせたショット技術を習得することが欠かせません。これには、風を背に受けた時の低い弾道でバックスピンを抑えたドライバーショットや、向かい風や追い風に対応したアイアンとウェッジのノックダウンショット(向かい風時にはスピンを少なくし、追い風時にはスピンを多くする)など、さまざまなショットの習得が含まれます。追い風を活かした高弾道でスピンを多く加えるティーショットをうまく使いこなせると、さらにプレイに有利に働きます。
しかし、技術だけでなく、距離感の正確なコントロールも同じくらい大切です。追い風の場合はボールがなかなか止まらず、向かい風の場合は逆にボールが止まりやすいので、これらの状況をどれだけ正確に見極められるかが、グリーンへのアプローチショット選択において重要になります。風を巧みに操るプレーヤーへと成長することを目指し、特に上級プレーヤーには、これらの技術を深く研究し、目標にしてみることを推奨します。